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特許出願件数は年々減少気味と言われているけれど分野別にみるとどうなんだろう。
伸びている分野もあるんじゃないかなあ。
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こうした疑問に答えます。
特許出願の分野には機械・電気・化学などさまざまありますが、分野別の特許出願の件数の推移のデータは公開されていません。
そこで、今回筆者はJ-PlatPatで公開されている特許の公開公報にもとづいて、特許出願が伸びている分野と伸びていない分野について調べてみたのでその結果と考察をお話しします。
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今回の記事が参考になる人
- これから弁理士で独立開業を考えている人
- これから特許事務所に就職・転職を考えている人
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1.分野別の特許出願の件数の推移の検証方法
今回、分野別の特許出願の件数の推移を検証するにあたり、2009年・2014年・2019年の特許出願件数を調べました。
なぜ2021年度ではなく、2019年度であるかというと、J-PlatPatですべてが公開されている最新年度が2019年度であるためです(特許出願は出願してからや1年6か月後に公開。)。
次に、分野別の特許出願の件数の推移の傾向を調べるにあたり、2021年特許公開公報出願人ランキングのベスト20のそれぞれの出願人をその分野の代表として、それぞれの2009年・2014年・2019年度の出願件数を調べました。
2021年特許公開公報出願人ランキングのベスト20は以下のとおりです。
出願人 | 分野 | |
1位 | キヤノン株式会社 | 電気 |
2位 | トヨタ自動車株式会社 | 機械 |
3位 | パナソニックIPマネジメント株式会社 | 電気 |
4位 | 三菱電機株式会社 | 電気 |
5位 | 株式会社三洋物産 | 遊戯 |
6位 | 株式会社三共 | 遊戯 |
7位 | 株式会社デンソー | 電気 |
8位 | 本田技研工業株式会社 | 機械 |
9位 | セイコーエプソン株式会社 | 機械 |
10位 | 株式会社リコー | 機械 |
11位 | 株式会社大一商会 | 遊戯 |
12位 | 株式会社東芝 | 電気 |
13位 | コニカミノルタ株式会社 | 電気 |
14位 | 富士フイルム株式会社 | 化学 |
15位 | 日本電気株式会社 | 電気 |
16位 | 株式会社ユニバーサルエンターテインメント | 遊戯 |
17位 | 株式会社日立製作所 | 電気 |
18位 | シャープ株式会社 | 電気 |
19位 | 大日本印刷株式会社 | 機械 |
20位 | ソニー株式会社 | 電気 |
参考:知財ラボ「2021年特許公開公報 出願人ランキング」
ランキング20位以内に分野が化学の出願人の数が1つしかないため、さらに以下の化学メーカーについても特許出願の件数の推移を調べることにしました。
37位 | 花王株式会社 | 化学 |
42位 | 積水化学工業株式会社 | 化学 |
43位 | 東レ株式会社 | 化学 |
52位 | 住友化学株式会社 | 化学 |
参考:知財ラボ「2021年特許公開公報 出願人ランキング」
2.分野別の特許出願の件数の推移の検証結果
まずは電気分野の特許出願の件数の推移結果は以下のようになりました。
出願人 | ランキング | 2009年度 | 2014年度 | 2019年度 |
キヤノン株式会社 | 1位 | 7016件 | 8158件 | 6827件 |
パナソニックIPマネジメント株式会社 | 3位 | 11736件 | 5637件 | 4522件 |
三菱電機株式会社 | 4位 | 5759件 | 5493件 | 2787件 |
株式会社デンソー | 7位 | 2821件 | 3889件 | 3740件 |
コニカミノルタ株式会社 | 13位 | 3245件 | 2167件 | 1574件 |
日本電気株式会社 | 15位 | 3959件 | 2051件 | 964件 |
株式会社日立製作所 | 17位 | 2970件 | 2056件 | 1462件 |
シャープ株式会社 | 18位 | 4221件 | 1386件 | 1574件 |
ソニー株式会社 | 20位 | 3556件 | 1653件 | 637件 |
参考:特許検索システム「Innojoy」を使用してデータを抽出。
電気分野は株式会社デンソー以外は全て減少傾向にあります。
この中でも8社中7社が10年前と比べて半数以上出願件数が減少しているという結果となりました。
次に機械分野の特許出願の件数の推移結果は以下のようになりました。
出願人 | ランキング | 2009年度 | 2014年度 | 2019年度 |
トヨタ自動車株式会社 | 2位 | 8003件 | 5685件 | 5500件 |
本田技研工業株式会社 | 8位 | 3701件 | 2456件 | 2511件 |
セイコーエプソン株式会社 | 9位 | 6518件 | 4110件 | 2394件 |
株式会社リコー | 10位 | 4272件 | 3908件 | 2331件 |
大日本印刷株式会社 | 19位 | 1484件 | 2156件 | 1479件 |
参考:特許検索システム「Innojoy」を使用してデータを抽出。
いずれも機械分野は減少傾向にあります。
ただし、減少の割合は電気分野ほど悪くはない傾向にあります。
次に化学分野の特許出願の件数の推移結果は以下のようになりました。
出願人 | ランキング | 2009年度 | 2014年度 | 2019年度 |
富士フイルム株式会社 | 14位 | 3153件 | 1664件 | 1233件 |
花王株式会社 | 36位 | 1079件 | 805件 | 785件 |
積水化学工業株式会社 | 41位 | 708件 | 766件 | 816件 |
東レ株式会社 | 42位 | 641件 | 762件 | 748件 |
住友化学株式会社 | 51位 | 1193件 | 506件 | 743件 |
参考:特許検索システム「Innojoy」を使用してデータを抽出。
化学分野は積水化学工業株式会社と東レ株式会社以外は全て減少傾向にあります。
特に富士フィルム株式会社の出願件数の落ち込みは顕著ですが、それ以外では電気分野・機械分野と比較して落ち込みは緩やかです。
次に遊戯分野の特許出願の件数の推移結果は以下のようになりました。
出願人 | ランキング | 2009年度 | 2014年度 | 2019年度 |
株式会社三洋物産 | 5位 | 688件 | 1388件 | 2455件 |
株式会社三共 | 6位 | 523件 | 1811件 | 2490件 |
株式会社大一商会 | 11位 | 365件 | 992件 | 1844件 |
株式会社ユニバーサルエンターテインメント | 16位 | 134件 | 674件 | 1216件 |
参考:特許検索システム「Innojoy」を使用してデータを抽出。
遊戯分野ではいずれも出願件数は3倍以上と顕著に伸びています。
3.分野別の特許出願の件数の推移の考察
以上の検証結果をまとめると、特許出願の件数の推移には分野別に以下の傾向があります。
- 「電気分野」…出願件数が大幅に減少している傾向がある。
- 「機械分野」…「電気分野」ほどではないが全体的に減少傾向にある。
- 「化学分野」…「電気分野」「機械分野」ほど減少傾向にはないがそれほど大きく伸びているものでもない。
- 「遊戯分野」…出願件数が大幅に増加している傾向にある。
今回の推移の結果で大きく目立っていたことは、「電気分野」の大幅な減少傾向と「遊戯分野」の大幅な増加傾向です。
ここでさらに「電気分野」「遊戯分野」について、代理人のサーチをしてみると、「電気分野」では出願件数の多くを内製をしており、さらには大手規模の特許事務所に依頼している一方で、「遊戯分野」では大手規模のときょ事務所だけでなく弁理士数が数名の小規模の特許事務所に依頼していることが多い結果もわかりました(特許検索システム「Innojoy」を使用してデータを抽出。)
そうすると、電気系を得意とする弁理士であれば、出願件数が大幅に減少している傾向にある「電気分野」よりも今後も増加することが予想される「遊戯分野」を得意としていく方が得策かもしれません。
また独立開業を考えている場合においても、数名の小規模の特許事務所に依頼している「遊戯分野」を得意としていく方が得策かもしれません。
4.分野別の特許出願の件数の推移のまとめ
以上、特許出願のデータを用いて分野別の特許出願の件数の推移を検証・考察しました。
今後も特許出願のデータを様々な角度から切り開いて知財情報を発信していきます。